『ヒカルの碁』の解説動画、4本目を公開しました。
今回は第9巻、進藤ヒカルと洪秀英(ホン・スヨン)の一局です。 コメント欄で「一見悪手に見えて、実は妙手だった一手を解説してほしい」というご要望を頂いていた対局です。
元の棋譜は、韓国の女流初段どうしの対局
ヒカルの碁に出てくる対局には、すべて元になったプロの棋譜があります。
この洪秀英戦の元を調べてみると、意外な棋譜でした。 黒が李晶媛(イ・ジョンウォン)初段、白が尹暎善(ユン・ヨンソン)初段。韓国の女流棋士どうしで、しかも同じ権甲龍道場の門下です。
韓国は、女流棋士の制度ができるのが日本よりずっと遅かったのです。 そのため当時は、初段になったばかりの10代の2人が、すでに女流の頂点を争っていました。尹暎善さんは、のちに韓国女流のチャンピオンになります。
よくそんなところから持ってきましたね😃
序盤は「子供の碁」、終盤は本物
正直に言うと、序盤には「あれ?」と思う手があります。 特に大局観、全局的な判断は、まだまだだなと思うところが多いです。
ですが、終盤の読みとヨセは、非常にしっかりしています。
物語の中の2人は、プロを目指す14歳の少年です。 荒削りだけれど、読みの力はある。そういう少年どうしの碁として、この棋譜は本当によくマッチしているのです。
ヒカルの「妙手」は、本当に妙手だったのか
作中では、ヒカルが中央で打った手を、周りのみんなが「ミスだ」と思います。 黒に中央でポン抜きを許したからです。盤の真ん中のポン抜きは、それほど価値が大きいのです。
ですが、ヒカルには狙いがありました。
私の答えは、その一手は妙手ではありません。 ほかに打つ手がない、という手です。 妙だったのは一手ではなく、作戦なのです。
ポン抜きで強いと思われていた中央の黒が、あとから攻めの標的になる。 その場にいた誰も、そこまでは考えていませんでした。
終盤は「地」と「死活」が絡み合う
この碁の一番の見どころは、終盤です。
ただの地の増やし合い、減らし合いではありません。 相手の石の眼を脅かしながら、少しずつポイントを上げていく。活きるか死ぬかと、地が増えるか減るかが、同時に動いています。
AIで確かめると、終盤の途中まで黒が3目半ほどリードしていました。 そこから、1手の何気ない出が、黒の逃げ道を消してしまいます。結果は、ヒカルの白番1目半勝ちです。
半目、1目を争う碁では、こうした小さな手が勝敗を分けるのです。
洪秀英という名前について
動画で話し忘れたことを、ショート動画にしました。
洪秀英の「洪」は、日本で洪道場を開き、一力遼さんや芝野虎丸さんを育てた洪清泉(ホン・セイセン)さんの「洪」。 「秀英」は、韓国で道場を開き、日本からの留学生もたくさん受け入れてきた張秀英(チャン・スヨン)九段の「秀英」です。私の息子もお世話になりました。
子供の指導で知られる2人の名前が、上と下に並んでいるのです。
ただ、これは私の勝手な連想です。 洪さんが日本で道場を始めたのは、ヒカルの碁の連載が始まった後なので、偶然かもしれません。
ショート動画はこちらからご覧ください。 洪秀英の名前は、2人の名前を合わせたもの?
ヒカルの碁の解説動画
これまでの解説は、再生リストにまとめています。
- ① 塔矢名人vs佐為 ヨセの妙手
- ② 北斗杯 進藤ヒカルvs社清春
- ③ 北斗杯 ヒカルvs高永夏
- ④ 洪秀英戦(今回)
「この対局も解説してほしい」というご要望があれば、YouTubeのコメント欄で教えてください。