ミム囲碁ラジオ

意志が弱い囲碁棋士による「努力を続ける小さな工夫」

こんにちは。棋士の三村智保です。
今回は「努力を継続するためのコツ」について書きます。
これはあくまでも“努力を続けるのが苦手な私”の話

普通にコツコツ頑張れる方には必要のない話です。

でも、もしあなたも「やらなきゃとは思ってるけど、なかなか続かない…」と感じることがあるなら、参考になるかもしれません。


1. とにかく「合格ライン」を下げる

囲碁で上達するためのスケジュールを決めるとします。
たとえば私なら、囲碁で勝つための練習や運動習慣、食事習慣などにも取り組みます。

そのときに、できるだけ小さい単位で合格となるようにします。

詰碁だったら1日1問だけ。
棋譜並べは碁石を1個置くだけ。
筋トレなら腕立て1回だけ。

「それで意味あるの?」と思うくらい、小さくするのがコツです。

でも、やってみると不思議なもので、1問やるともう1問、石を1つ置くとその先が気になって10手、100手並べたりしてしまいます。
始めてさえしまえば、意外と続くことが多いんですよね。

最もしんどい「初動の負担」を軽くできるからだと思います。
ぼくらは動きたくないんです。でもいったん動いてしまえば勝手に動き続けるところがあります。


2. できる限り毎日やる

「週に1回」とか「2日に1回」などと決めてうまくいったことはありません。
それで続くのは意志力がある人だと思います。

毎日の習慣にするほうが無意識化、自動化しやすいと思っています。
毎日でない習慣は、意識で行う必要があるのではないでしょうか?

それは私には難しいです。気づけば10日以上たっていた…そういうことがよく起こります。

だから私は“毎日やる”ようにしています。
「毎日やった方が効果的」という意味ではなくて、**“毎日の方が忘れないから”**です。

そして、毎日やるにはハードルを下げる必要がある。
1と2をセットにして「ちょこっと毎日」です。

1問だけでOK、石を触るだけでもOK──そう決めておくと、自然と続けやすくなります。


3. 途切れても気にしない

ここが一番大事かもしれません。

どんなに小さなことでも、習慣は時々途切れます。
寝坊する日もあるし、気分が乗らない日もあります。

でも、それで「ダメだな自分…」と落ち込んでしまうと、再開が難しくなります。

私にはそういうところがあって、途切れるたびに自分にダメ出しをしていたのですが、ある日、脳科学者の茂木健一郎先生が

途切れても気にしないで、また続ければいいんだよ」とおっしゃっていたのを聞いて救われた思いがしました。

それ以来、途切れても「OK!今日からまたやろう」と、ゆるく戻るようにしています。


意志の弱い私が後輩たちに伝えたいこと

私は習慣化という巨大な敵と40年戦ってきて、自分がいかに怠け者であるかを知っています。

そんな自分に合う方法が
ちょびっとだけやる」「毎日やる」「途切れても気にしない
という、3つの工夫なのです。

このやり方で、囲碁も、運動も、ラジオ収録も細々と続けられています。
(もちろんダメになった習慣もあります。それもまた良し。)
何もやらなかった1年間より、サボりながらもやり直し続けた1ヶ月の方が、きっと意味があります。


最後に──10代の生徒たちへ

私の道場の生徒たち、小・中・高校生たちへ。

このような習慣化の技を10代のうちに身につけることができたら、
人生はきっともっとラクになるし、自信もつきます。

55歳の私ですら、今もあたらしい習慣作りを試行錯誤して取り組んでいます。人生の初期から行えば、はるかに効果は大きいでしょう。
自分の意志力をあてにせず自動化するのがコツだと思います。


📻 みむいごラジオでは、こうした等身大の話をお届けしています。
興味ある方は、ぜひ聞いてみてくださいね。

それでは、また次の記事・放送でお会いしましょう。
囲碁棋士 九段 三村智保

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