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▼「なるほど分かる」と「意味わからん」▼
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以前書いた納得感の話の続きみたいな話です。
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▼囲碁を学ぶときに感じること▼
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囲碁を習う、本を読む、テレビの解説を見るときなど、自分より強い人の説明に対して「なるほど!」と思うことがありますよね。わかった!新しいことを理解したという感じで、気分が良いと思います。
いっぽう、何のことを言っているのが、全く意味がわからないときも多くあるでしょう。
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▼テレビ講座の分かり易さ▼
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私が以前Eテレで囲碁講座を半年やっていた時期には多くの方に声を掛けられました。
褒めてくれるときは「分かりやすいです。勉強になります。」というもので、相手も嬉しそうに話されます。
反対に「難しいです。」という方も一定数いて、少しつらそうに話されるので、私も申し訳ない気持ちになったものです。
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▼どちらが良いことか?▼
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私の経験では
「なるほど!」は既に自分が理解している内容をうまく説明してくれた、あるいは理解してるところから少しだけ上のレベルの内容、なのだと思っていて
「意味わからん」の場合は、全く自分の中に無いものを示されたときに感じることだと思うのです。
「なるほど!」は納得感があって気持ちも良いけれど、既に知っていることの確認であり
「意味わかららん」こそが得難い教えかも知れない、と考えています。
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▼プロ棋士たちも「意味わからん」▼
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僕らプロ棋士がAIの囲碁を初めに見たときにも「なるほど!」と「全く意味わからん」の両方がありました。
例えば三々にいきなり入る手(ダイレクト三々)には仰天しましたし、全く意味不明で不快感さえ感じたものです。
でも職業ですから避けて通るわけには行かず、理解できないまま試してみるしかありません。仮に自分が避けていても相手が打ってきますから。
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▼「わからん」を寝かせる▼
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そして「意味わからん」のまま体験をこなす内に、少しずつ感覚が変化して来ます。
「わからん」ことがじわじわと自分の囲碁を変えて行くのです。
囲碁を学ぶものにとって、盤上での発見、新技術を見て理解することは喜びです。
しかしこの気分の悪い「意味わからん」の方に、自分の碁を飛躍させるヒントが隠されているのです。理解できないから苦しいわけですが、そこを気にしないで受け取っておく。
分からなかったことを覚えておいて、自分の中に溜めていく。これが有効なのではないかなと思っています。
そもそも囲碁というのは真面目に取り組むほど、理解できないことばかりになります。ずっと囲碁のプロをやっていると「意味わからん」に慣れているという面があるかも知れません。
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▼まとめ▼
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- 講師は分かりやすいと褒められ、難しいと不満をもたれる。
- でも「意味わからん」教えこそ価値が高いかも知れないよ?
- 囲碁は「分からん」まま、やってるうちに分かってくるもの。
- 「意味わからん」を気にせず、受け取っておこう。
- ストックされたものが無意識内で消化されて僕らの囲碁が強くなる。