囲碁コラム 自戦解説

新棋戦「SGW杯中庸戦」

2018年後半、また新たな棋戦が出来た。

その名もSGW杯中庸戦という。

 

20才以下、30才以下、50才以上、40才以上、など世代別の棋戦が近年増えており、本棋戦もユニークな特色を持つ。日本棋院ホームページに記載された詳細を見てみよう。

第1回 SGW杯中庸戦

棋戦名称 SGW杯中庸戦
主催 日本棋院
協賛 株式会社セントグランデW
優勝賞金 200万
棋戦形式 予選:ネット対局(幽玄の間)によるトーナメント方式
本戦:16名によるスイス方式4回戦
秒読み 予選:1手20秒、1分の考慮時間5回
本戦:1手30秒、1分の考慮時間10回
コミ 6目半
出場資格 日本棋院所属の31歳以上60歳以下かつ七大棋戦、竜星戦、阿含桐山杯の優勝経験が無い棋士

赤字のところが最大のポイント。中庸戦というだけに中間の世代で、しかも棋戦優勝経験が無い棋士だけ、という点が面白い。

活躍したことの無い棋士にチャンスを与えよう、という棋戦だ。

なおこの中にはNHK杯などの、予選が無くシードで参加者が選ばれる棋戦や、新人王戦などの年齢制限がある棋戦は含まれない。

「全棋士参加の棋戦での優勝経験が無い棋士」と言う事で私も参加出来る事になった。楽しい棋戦を協賛して頂いたSGW様に感謝している。

 

まず約100名の棋士によって予選が行われた。20秒のネット対局で3回戦である。全局が幽玄の間でネット中継されたのでご覧になった方も多いだろう。

16の予選トーナメントのうち、私はここに入った。きびし目の枠と思った。

(すべての対戦表はこちら)

ネット対局であることで、パソコンがあればどこでも打てる。関西の棋士、中部の棋士も移動なしで予選を行えるのがメリットだが、実際に場所を決めるにあたっては悩まされた。

 

普段僕らは静かな対局室で打つ事に慣れている。出かけずに自宅のパソコンで打てるのは楽な面もあるが、妨害要素は意外に多い。

電話が鳴ったり、宅急便が来たり、子供が近づいて来たりする場所では、とても1手20秒の早碁に没頭は出来ない。

 

そこで1回戦と2回戦は、自宅付近にある私の道場で打った。平日の昼は生徒がいないのと、電話も置いてないので安心だ。

 

10時から川田六段と打ち、14時から溝上知親九段と打ち、どちらも苦しいながら勝ち進む事ができた。大体1局に1時間かかった。

 

3回戦開始時間の16時には、道場に生徒達が来る。私の道場は部屋がいくつも分かれている訳では無いので、続行は無理である。

 

そこで近くの喫茶店にパソコンを持ち込んで打つ事にした。

駅前である事もあり、結構人が多い。普段は気にならないガヤガヤ聞こえる話し声が、今からここで試合だと思うとかなり気になる。

 

私は思考中の音に弱いのである。ただ、どれも「人に話しかけられてしまった時の被害」に比べれば些少なものだ。それはきっと大丈夫だろう。

 

また、持ち出し用のブルートゥースのマウスがちょっと危うい。カーソルがゆるゆると定まらない時がある。秒読みでは9を読まれないように打とうと思った。

 

そしてこれが予選決勝の棋譜である(▶を押して再生)。

 

 

全般的に展開に恵まれ、楽な気持ちで打つ事が出来たが、最後の方で私がやらかしている。

ともあれ16名での本戦が打てる事になったのは、非常に嬉しい。本戦も頑張りたい。

 

他の棋士の対局では、どえらいクリックミスがいくつか起こっていた。やはりネット20秒早碁は、トラブルが起きやすい。

 

プロが転ぶところも見てみたい。そういう方は是非、幽玄の間ネットで棋譜をご覧頂きたい。私の1,2回戦の碁も出ていて、特に溝上九段戦の終盤は面白い攻防になった。

 

対局を終えてすぐ、道場に指導に戻った。妻や弟子たちもパソコンの前で中継を見ていた。中継されていた対局者が5分後には身近にいるのは面白かったのではないかと思う。

-囲碁コラム, 自戦解説