WGC杯の本戦が3月18日から3日間、東京市ヶ谷の日本棋院で行われた。
前日17日にプレイベントとして行われた「女流棋士+AIペア碁マッチ」も非常に面白かった。こちらで棋譜が見られる。
1回戦でDolbaram(石風)が、取られているシチョウを1回逃げた。AIがシチョウを間違えやすい事は有名だが、実際に試合で打たれるとビックリすると思う。
それで日本チームが優勢だったのだが、最後は惜しくも逆転負けとなった。
ペア碁は予期しない進行になる事が多く、気持ちの切り替えが難しい。
その点、味方のミスに動揺する事もなく淡々と最善手を目指す人工知能は、ペア碁向きと言えるらしい。
中国ペアの優勝が決まった後、参加棋士たちの記者会見と組み合わせ抽選が行われた。
棋士名 | 1回戦 | 準決勝 | 決勝 |
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張 栩九段 | |||
申 眞諝九段 | |||
廖 元赫七段 | |||
朴 廷桓九段 | |||
柯 潔九段 | |||
劉 昌赫九段 | |||
江 維傑九段 | |||
井山裕太九段 |
張栩名人は、今や朴廷桓九段と肩を並べる、韓国のシン・ジンソ九段と対戦。ちょっと珍しい碁形になった。
黒の張栩さんが4隅を取り、右辺も潜っている。名人戦の時にも見られた、相手に中央を囲わせる作戦だ。
私などは白模様が大きく見えてしまい、とてもマネが出来ないが
「途中まで形勢に手応えを感じていた」と名人のコメントがあった。
結果が出なかったのは残念だったが、中央の地を見通せる張栩さんならではの打ちまわしだったと思う。
井山裕太さんの相手となった江維傑九段は、LG杯で優勝経験もある中国トップ棋士の1人だ。
白の江さんが、1から力を出してきた場面。
黒1から丁寧に決めて黒5が的確な返し技で、黒は突破に成功した。
以下白3子を取った上、白には下辺を活きる1手をかけさせ、黒12となってはハッキリ有利になった。後も危なげない勝利だったと思う。
そして準決勝の井山裕太ー柯洁(潔)戦。こちらは動画で喋ってみた。
何しろ碁が難しいので私が説明するには限度があるが、雰囲気だけでも伝わればと思う。
負けてしまったのは非常に残念だが、正直、江維傑九段との碁といい、柯洁九段との内容といい「井山先生全然イケている」いずれ近い内に優勝のチャンスがあると感じた。
決勝戦は柯洁ー朴廷桓、やはりこの2人はいつも強い。
黒の朴廷桓さんが新手を見せた。黒1ノビでは9にアタリが定型でもあり、石の形的にも打ち惜しむ理由は無いと思える所なので、非常に意外性ある1手だ。白8までとしてから時間差で黒9とアテ、どうやら黒がポイントを上げたらしい。
白8では9が正しいとウチのAI君たちは言っているが、私にはチンプンカンプンだ。
かつて星打ちは簡明な定石が多いのでオススメだと言っていたが、今は全く逆になった。難しい変化が多すぎる。
この後、中盤過ぎた辺りでは柯洁さんが優勢になったようだが、終盤にチャンスを逃して朴廷桓さんの優勝、3連覇となった。柯洁さんは後半に全く間違えないイメージがあったが、少しミスが出るようになったのかも知れない。
このWGC杯では、大盤解説会も大盛況だったと聞く。やはり世界戦を間近で見たい囲碁ファンはとても多いのだろう。
我らが井山裕太先生も、日本開催の時の方が勝ちやすそうに見える。
協賛していただいている各社の皆様に感謝するとともに、これからも是非よろしくお願いします、とお伝えしたい。
来年も楽しみだ。