囲碁コラム

ワールド碁チャンピオンシップ2019②

2/24から6日間をかけて行われた国際予選。その結果は予想以上に厳しいものだった。

WGC杯国際予選 一般の部 結果

市ヶ谷にある日本棋院ビルの6階フロアに、錚々たる顔ぶれが並んでの対局風景はYouTube日本棋院囲碁チャンネルで見ることができる。

中国開催の世界棋戦、韓国開催の世界棋戦での予選には、開催国の全棋士、女流棋士、アマチュアも参加するなど多彩だが、今回はトップ選手だけが集結した。

 

ネット中継や棋譜で名前をよく見る世界のトップ選手、時越さんや范廷鈺さん、謝爾豪さんなどが、同じ部屋で対局している事に不思議な思いがしたものだ。

 

日本の若手達が1勝も出来なかったのは驚いたが、この予選を抜ける事は難しいとは、私も事前から思っていた。

 

僕らとしては今回の棋譜を研究して、彼らとの違いは何かを調べる事が重要だと思う。

 

ナショナルチームは当然それを行うと思うが、私は個人的にそこを分析したいと思っていた。

その意味でもこのWGC杯は、私にとって非常に貴重な機会だった。自分の対局を終えた後は、その作業に専念した。

彼らは私より強いわけだから、碁の内容について、そう容易く分析できる訳では無い。まずはよく観察して焼き付けることだろう。時間が経って何かが見えて来る事は良くある。

 

見たままの感想としては、打つのが速いこと、打ち筋が沈着冷静であること、意外に対局マナーが良いことがあった。

 

最近の中韓の若い棋士には、石を握ったまま考えて打つイメージを持っていたのだが、特に先に名を挙げたお三方や辜梓豪さん達はそういう事が無く、ボヤキもなく非常に対局態度の良い棋士と思えた。

 

もちろん中には、常時10個くらい碁石を持ってじゃらじゃら鳴らしてる棋士もいて、その人も非常に強い選手で勝ち進んでいた。

自分の生徒たちには、范廷鈺さん辜梓豪さん謝爾豪さんの対局姿を是非真似て欲しいと思っている。

 

結局どちらの枠も中国同士の決勝。日本から見て韓国若手は強く、中国は更に上、という印象が残った。

WGC杯 国際予選 シニアの部 結果

シニア枠に参加した私は、初戦を勝ったものの2回戦で敗退となった。

徐奉洙九段は武宮正樹先生と同世代。世界優勝もしている強い棋士だが、最近ずっと名前を見てなかったせいで、今も強いのかどうか、甘く考えていた面があった。

実際は、読みもヨセもミスが期待出来ない感じで、終わってみれば終始リードされての完敗だった。

相手の強さがもっと分かっていたなら、もっと踏み込んだと思う。私なりに40日断酒しての戦いだったが、そこが非常に残念だった。

 

それにしても、同じ山の高尾九段が初戦で敗れたのは驚かされた。

劉昌赫九段はかつて何度も世界優勝した強い棋士ではあるが、50を過ぎている。若く現役でもある高尾九段が当然勝つだろうと思っていたのだ。

 

国内若手棋士のレベルが高すぎて目立たなくなっているけれど、韓国のベテランも変わらず鍛えている、ということかも知れない。

勝ち残る人数は多くても、結局劉九段を倒せず、1枠穫れると期待していたシニアでも、日本勢は抜けられなかった。

結果は残念だったものの、世界のトップ選手の戦いぶりを間近で見られた事は、個人的に多くのことを感じられて貴重な体験だった。

 

本戦トーナメントには井山裕太五冠と張栩名人が出場する。

中国からシード1名(おそらく柯洁九段)+予選を抜けた江維傑九段、廖元赫七段

韓国から前回優勝の朴廷桓九段+劉昌赫九段

という8名での戦いになる。

 

国際予選は当初公開予定が無かったものの、私が提案をして1回戦と決勝の解説会を設定してもらえたのは、本当に良かった。

本戦トーナメントは当然すべて公開されるので、囲碁ファンにとって3日間堪能できる一大イベントになると思う。私も観戦を非常に楽しみにしている1人である。

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