囲碁では白番が優勢の時に「盤面勝負」という表現をよく使う。
盤上の黒と白の地が釣り合っている、つまりコミの分(6目半)白が優勢だという意味で、不動の優位と言うニュアンスで使われる。
そして黒が優勢の時によく使われるのが「盤十」という言葉だ。
盤面で10目黒地が多い、すなわちコミを引いて3目半のリードと言うわけで、これもプロ同士なら大抵動かせない差の目安として僕らは使っている。
本局のMasterは最終的に「盤二十」の差をつけて勝っている。
普通それだけ大差が付く前に、手順を見て「これは白ダメだ。黒の勝ちだ。」と思う場面がある筈だが、それが無いまま「終わってみると大差」という印象だった。
Masterがどこでそんなに得しているのかが、私には見えない。対局者の李さんもそれ程「斬られた感」が無いまま打っていた可能性がある。
大きくリードされていると感じていれば、もっと早めに勝負手を打つのが普通だが、本局は終始淡々と進めている様に見える。
私が指導対局をする時には、これくらいの差で勝つことがよくある。途中、明らかに自分が得している手応えがあって「大差になるのも不思議はない」と感じる。
教わる者は、ポイントを失っている事が見えてない。ずっと後に「どこでこんなに差をつけられたのか?」となる。
この「どこで」を自分で気づく事は相当難しい。
やはり上達のために、自分よりハッキリ強い人に意見を聞くことが大事だと、改めて思う。
ただし私より碁盤が見える人は沢山いるが、お願いして教えてもらえそうな人を見つけるのは難しい。
「秀行先生がMasterの碁をみたら何と言うだろうか」ぜひ聞いてみたいが、この願いは叶わない。