序盤、左辺での打ち方が非常に印象的だ。
低く地を取ったかと思えば、実利を放棄して厚みを選んだり、自在で偏る所が無い。
白の大石が危険なまま放置されて進行したのは、白が1手守っていては地合いで勝負にならないから。どこで差がついたのだろうか。
こんなに強い囲碁AIが現れた事は、囲碁史上、非常に大きな出来事だろう。
インターネットの誕生は我々棋士の環境も大きく変化させた。毎日多くの練習対局を可能にし、大量の棋譜を目にする事が日常化した。
それでも私にとって、特に自分より強い人の棋譜を調べてみる時、60局はとても大きな数字だ。
ちょっとやってみようと、簡単に考えて、数局で後悔した。後先を考えて行動する性格だったら、これを作りはしなかっただろう。
それでこの、1棋士による60局の素朴な感想記は、のんびり、コツコツと更新され、9ヶ月掛かってようやく終わった。完走できてホッとしている。
その間にもAIたちはどんどん進化して、AlphaGoの打ち筋も、この60局とはハッキリ違うものになっている。
こんなに早く変化するものに対して、人間の理解が追いつく事は難しいのではないか。
意味を解ろうとするのとは違うアプローチも良いかもしれない。
この60局の感想も直感的に、深く考えていない事でも、出来るだけそのまま書いている。
AIの強さを解読出来ている訳では全く無いが、今非常に増えているAIの囲碁に関心を持つ囲碁ファンの皆さんに、少しでも楽しんで頂けたらと思う。